秘太刀馬の骨 藤沢周平 文藝春秋
北国の藩、筆頭家老暗殺につかわれた幻の剣「馬の骨」。下手人不明のまま六
年、闇にうもれた秘太刀探索を下命された半十郎と銀次郎は藩内の剣客ひとりひ
とりと立合うことになる。やがて秘剣の裏に熾烈な執政をめぐる暗闘がみえてくる。
「BOOK」データベースより
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本書はもちろん「時代小説」だが、ある意味「推理小説」の様相も呈している。
筆頭家老を暗殺した秘剣遣いを探索していき、最後にその秘剣遣いの暗殺者が
判明する。だが厳密に「推理小説」といえないのは、細かな伏線が張られていない
ことと、「オール読物」に連載されていたときと、単行本ではその”秘剣遣い”が
別の人物になっていることである。何故連載時と単行本発刊時で、結論ともいえる
”秘剣遣い”を異なる人物にしたのか私は知らない。
藤沢作品といえば、作者自身の出身地の山形県にあった庄内藩をモデルにした
架空の藩「海坂藩(うなさかはん)」を舞台にした作品が有名だが、本書も
読み進めていくと、庄内弁が多用されていることからも海坂藩のようであり、
でも違うようでもあり、はっきりしないが、中盤に初めて海坂藩につきものの
川の名前「五間川」が登場する。そこで初めてこの物語が、海坂藩でのことだと
判明する。疑問に思うのは、何故前半は川を「川」としか書いていないのに、
中頃から「五間川」としたのだろうか。
秘剣遣いの探索と並行して、主人公浅沼半十郎と妻の杉江の夫婦関係が進んで
いく。1年前に長男を亡くしてから心が不安定になった妻が時の流れとともに変化
していく。そこには単なる「推理」ものにはしない、作者の深謀遠慮が伺える。
構成はシンプルで分かりやすく、初めから映像化することを目的にしたような
平明さである。時代小説に馴染みがない人にでもサラッと読めるだろう。
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秘太刀馬の骨

