2006年05月21日

秘太刀馬の骨

秘太刀馬の骨  藤沢周平 文藝春秋

北国の藩、筆頭家老暗殺につかわれた幻の剣「馬の骨」。下手人不明のまま六
年、闇にうもれた秘太刀探索を下命された半十郎と銀次郎は藩内の剣客ひとりひ
とりと立合うことになる。やがて秘剣の裏に熾烈な執政をめぐる暗闘がみえてくる。
「BOOK」データベースより
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本書はもちろん「時代小説」だが、ある意味「推理小説」の様相も呈している。
筆頭家老を暗殺した秘剣遣いを探索していき、最後にその秘剣遣いの暗殺者が
判明する。だが厳密に「推理小説」といえないのは、細かな伏線が張られていない
ことと、「オール読物」に連載されていたときと、単行本ではその”秘剣遣い”が
別の人物になっていることである。何故連載時と単行本発刊時で、結論ともいえる
”秘剣遣い”を異なる人物にしたのか私は知らない。

藤沢作品といえば、作者自身の出身地の山形県にあった庄内藩をモデルにした
架空の藩「海坂藩(うなさかはん)」を舞台にした作品が有名だが、本書も
読み進めていくと、庄内弁が多用されていることからも海坂藩のようであり、
でも違うようでもあり、はっきりしないが、中盤に初めて海坂藩につきものの
川の名前「五間川」が登場する。そこで初めてこの物語が、海坂藩でのことだと
判明する。疑問に思うのは、何故前半は川を「川」としか書いていないのに、
中頃から「五間川」としたのだろうか。

秘剣遣いの探索と並行して、主人公浅沼半十郎と妻の杉江の夫婦関係が進んで
いく。1年前に長男を亡くしてから心が不安定になった妻が時の流れとともに変化
していく。そこには単なる「推理」ものにはしない、作者の深謀遠慮が伺える。

構成はシンプルで分かりやすく、初めから映像化することを目的にしたような
平明さである。時代小説に馴染みがない人にでもサラッと読めるだろう。
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秘太刀馬の骨
  
Posted by ikusanin at 14:42

2006年05月13日

新商品発売!毘沙門天Tシャツ

シンボルシリーズ第1弾「毘沙門天」バージョンアップして新発売。

SAMURAIYA第1号商品の「毘沙門天Tシャツ」に、2006バージョンとして、背面上部に
上杉家家紋「竹に飛雀」を入れました。
前面の「毘」の一字は、本宮ひろし氏の不朽の名作「俺の空」や「男樹」の題字を
手掛けた山崎秀鴎先生に揮毫してもらった最高にカッコイイ字です。

”越後の龍”と異名をとった上杉謙信ファンのあなたへ。

Tシャツ13  
Posted by ikusanin at 10:39

2006年05月01日

今年は藤沢周平を読む

私の趣味は読書です。中でもビジネス書と人文書、そして時代小説が好き
ですが、とにかく乱読です。
ビジネス書、人文書は特定の作者の著書を中心に読みますが、時代小説は
今まで特定の作者を決めず読んでいました。その中で当然合う、合わないと
いうのがあるのですが、私の感性に一番合ったのが隆慶一郎氏でした。
私は隆氏の視点の斬新さ、情景描写のダイナミックさ、登場人物の魅力に
惚れました。残念ながら急逝したため、残された作品数は少ないのですが、
どれも宝石のような輝きを放っています。
藤沢周平氏に関しては、直江兼続を主人公にした「密謀」を含め数作品を
かなり昔に読みましたが、何故かその後、手に取ることがありませんでした。
読みたいと思わなかったのです。

しかし、乱読の私が最近になって、一人の作者の作品を読み込んでいこうと
考えるようになったのです。そんな心持ちで本屋に行き、どの作者にしようか
と思案しながら店内をまわっていたとき、ふと目にとまったのが「蝉しぐれ」でした。
映画化されたためタイトルを覚えていたからでしょう。映画は観ていませんが、
本を手に取り、パラパラとページをめくり、出だしの一行目「海坂藩普請組
の・・・」の一行を見たとき、急に昔のことを思い出しました。藤沢周平氏は
現在の山形県鶴岡市の出身です。実は私も仕事の関係で鶴岡市に半年程
住んでいたことがあり、冬場の猛烈な地吹雪、山形名物の芋煮、あの独特の
庄内弁がサーッと思い出されたのでした。
その瞬間に、「今年は藤沢周平を読もう」と決め、5分ほどの間に、「蝉しぐれ」
「秘太刀 馬の骨」「三屋清左衛門残日録」「麦屋町昼下がり」の4冊を手に取り
レジに向かっていました。何故この4冊にしたのか、特別の理由があったわけ
ではありません。過去一度も読んでおらず、映像化されたものを観ていない
作品の中で、フィーリングだけで決めました。

私は山田洋次監督の映画がとても好きです。その山田監督初の時代劇が、
アカデミー賞(2004年)第76回 外国語映画賞にノミネートされた「たそがれ清兵衛」
です。その作品の完成披露記者会見で、山田監督は語りました。
『僕達日本人にとって身の丈にあった暮らし方は何だろうという事を今は考え
なければいけないんじゃないのか。ひたすら上昇思考の中でひたすら贅沢な
暮らし、よりデラックスな暮らしという風に追いかけてきたのがこの40年50年
だったとすれば、まあそこに思いきってブレーキをかけなければいけない時じゃ
ないか。このままじゃ絶対良くないんじゃないかという思いが僕にあったのは
事実です。
で、それは藤沢周平さんの作品の魅力も実はそこにあるような気がします。
この時代、とても生活が辛くて苦しくて、でもそこに今僕達が失ったたくさんの
ものがあって一種のユートピアを読者は感ずる事が出来る…そんな風に僕は
藤沢周平の作品を読んでましたしね。』


私は藤沢作品には明るくありませんが、今の時代に大切な何かがそこに描かれて
いるような気がしていますので、一冊一冊ゆっくり時間をかけて読んでいこうと
思います。  
Posted by ikusanin at 12:56