2006年01月21日

常山紀談

常山紀談 湯浅常山

book-jozan

本書は、戦国武士の節義を顕彰しようと戦国時代から近世初頭にいたる時期の武士の逸話を700あまり収めた書です。1739年(元文4)刊行。名将の面目躍如たるこの歴史物語は,平明な文章も相俟って,幕末から明治にかけて広く読みつがれました。著者は岡山藩士で、藩の奉行を歴任し、家老格にまでなった漢詩人の湯浅常山(1708‐1781)


多くの歴史小説の資料、タネ本になっている本です。
私が所蔵しているのは、明治31年に発行されたものです。最近では、岩波文庫から
1988年に再版されましたが、残念ながら今では絶版になっていますので、購入する
には古書しかないでしょう。

700あまりのエピソードが収録されていますので、興味深い逸話が数多く掲載されて
います。例えば、隆慶一郎+原哲夫で一躍有名になった、前田慶次郎や島左近の記述
も僅かならが見当たります。慶次郎が末森城の合戦に参じた記述。
三成が左近を自分の禄の半分で召抱えた記述です。

■前田利家末森城後卷合戰の事
〜略 村井不破先陣、原隱岐前田叉次郎片山内膳二陣、田野村三郎四郎
青山與兵衞近藤善左衞門前田慶次郎押續く 〜略

■石田三成が事
〜略 水口四萬石与へられる後、三成に人数多招きたらんと問れしに、島左近一人
呼び出し候と申す。秀吉、それは世に聞ゆる者也、汝が許に小禄にていかで奉公
すべきといはれしかば三成、禄の半分を分ち二萬石與へ候と答ふ。秀吉聞て、
君臣の禄相同じといふ事むかしより聞きも傳へず。いかさまにも、其志なら
ではも汝には仕えじ。ゆゆしくも計ひたるかなと深く感ぜられ、島を呼び出して
手づから羽織を與えて、是より三成に能く心を合はせよといはれけり。
三成佐和山を賜はりたる時、島に碌増與ふべきよしいひけれども、禄更に不足にも
候はず。他の人々に賜はり候へと辞しけり。左近が父もと室町将軍家に仕へ、
左近江州高宮の傍にかひなきさまにて隠れ居たりしを三成が招き出しけるなり。

SAMURAIYAで1/29にリリースする新商品のモデル武将の記述もあります。

■尼子十勇士
尼子家十勇士と世に唱へるは山中鹿之介、薮原茨之介、五月早苗之介、
上田稲葉之助、尤道理之助、早川鮎之助、川岸柳之助、井筒女之助、
阿波鳴戸之助、破骨障子之助なり

本書は歴史書としてよりも、歴史読み物としてとても面白い一冊です。
戦国武将好きな人におすすめです。  
Posted by ikusanin at 11:21

2005年07月26日

お気に入りの忍者研究本

秘録戦国忍者伝 (付.忍術小事典) 桃園書房 宮崎惇
 
私は基本的に「侍好き」ですが、幅を少し拡げれば「戦国時代好き」、もう少し拡げると、
「戦国〜明治維新好き」です。戦国時代以前には何故か全く興味がありません。
戦国時代といえば、やはり「戦国武将」ですが、影の存在の「忍者」にも儚いロマンを
感じます。そこで「忍者研究本」を何冊か所有していますが、本書「秘録戦国忍者伝」は
特におすすめです。もっとも、この本は昭和49年初版で絶版になっており、再版されて
いませんので古本屋でしか入手できないでしょうが、見かけたら是非購入してみて下さい。
 
忍びというのは、影の存在ですから武士に比べれば資料が圧倒的に少ないのは当然です。
本書もその少ない資料、有名な「萬川集海」や「正忍記」などの散見する事歴から、
その朧な姿を浮かび上がらせています。
内容としては、忍びの歴史や生活などではなく、有名な風魔、甲賀、伊賀など実際に
集団で活動していた忍者の実態を分かり易く紹介しています。
他に、信玄の三ツ者、謙信の軒猿などについても詳しい。
ただ少し残念なのは、著者があとがきで語っていますが、紙幅の関係でしょうが
中国・四国・九州の忍びについて書かれていないということです。
そこで補足として、あとがきで中国・四国・九州地方の忍びについて少し触れられて
います。他に
、巻末の「忍術小事典」が親切だ。
 
本書を読むと、戦国の世に忍びがいかに大きな役割を果たしたのか実感できる。
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book-ninja
  
Posted by ikusanin at 11:25

2005年04月14日

隆慶一郎、宮崎駿の思想的交点

『無縁・公界・楽  網野善彦 平凡社』
 
私は二人のクリエイターをとてもリスペクトしています。
一人は、時代小説作家の隆慶一郎氏、いま一人は、映画監督の
宮崎駿氏です。
この二人の偉大な創造者には、思想上の共通点があります。
思想というよりは歴史観といったほうが適切かもしれません。
二人に影響を与えたのが、歴史学者・網野善彦氏です。
 
その網野善彦著「無縁・公界・楽」
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本書は一言で云って、難解である。当然小説のようにスラスラとは
読めない。一般的に学者の著した専門書は、私のような凡人には
そう易々とは読み解けないものだ。
網野善彦の本も例外ではない。「異形の王権」「日本の歴史を
よみ
おす」など数冊をなんとか読了したが、力作「日本中世の非農業民と
天皇」にいたっては途中で読むのをやめた。
しかし、本書は間違いなく歴史書の名著である。
 
隆慶一郎はある対談の中で次のように語っている。
『今までの日本の歴史というのは、水田稲作思考があって、定着民
の歴史のみが語られてきた。一方、多くの放浪する人々がいたわけ
ですが、彼らの歴史というのは全く書かれていない。彼らの視点から
歴史を見直すべきではないか、というのが網野さんの主張です。』
 
宮崎駿はインタビューの中で次のように語っている。
『歴史の表面とか、時代劇とかに出てこなかったものの中に、魅力の
ある集団が他にもいっぱいあった。』
『網野善彦さんの仕事とかでも、歴史で隠されていたヒダみたいな
ものが明らかになった。』
 
本書「無縁・公界・楽」の目次を少し見てみよう。
1 「エンガチョ」
2 江戸時代の縁切寺
・・・
全部で23章あるが、1章の「エンガチョ」、2章の「江戸時代の縁切寺」
隆ファン、宮崎ファンならこの2つを見てピンとくるだろう。
宮崎アニメ「千と千尋の神隠し」の中で、釜爺が千尋にエンガチョする
シーンがある。
また、隆作品の「駆込寺蔭始末」は江戸時代の縁切寺をモチーフに
している。
 
隆慶一郎と宮崎駿という二人の巨人に影響を与えた本書は、
二人のファンには是非一読してもらいたい一冊である。
但し、難しいのはご覚悟を...。
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無縁・公界・楽―日本中世の自由と平和
  
Posted by ikusanin at 13:10